雑記

キョン、勢力を拡大し房総半島を侵略中


キョンの侵入:房総半島を駆け抜ける野生の物語

房総半島を北上する波乱の一夜が、日本の農村に迫る。闇夜に混じり響く、「ギャー」という不気味な声。それは、シカ科の特定外来生物「キョン」が侵入の音色を奏でる合図だ。

夜明け前、千葉県いすみ市の竹林に連れられた私たち。その静寂を破るように、体長70センチほどのキョンが姿を現す。脚には、くくりわなに使った細いワイヤが絡みついている。彼らは、中国東南部や台湾に生息する野生動物であり、本来は日本には存在しないはずの存在。しかし、ある閉園したレジャー施設から逃げ出し、1960~80年代に房総半島に定着したとされている。

その後、キョンの勢力は拡大し、自治体の駆除活動も追いつかない状況に。茨城県内でも姿を現すなど、彼らの脅威は増大の一途を辿る。生態系や農業への被害は甚大であり、農家たちはその被害に悩まされている。

一方で、地元の猟師たちは、キョンの駆除と有効活用に取り組んでいる。彼らはその作業の中で、精神的な苦しみも味わいながらも、地域の人々からの感謝の言葉に支えられ、使命感を抱いている。

しかし、報奨金制度の下での捕獲作業は決して利益の保証があるわけではない。捕獲に必要な装備や修理費用、そして日々の労力。その上、アライグマなどの他の野生動物の存在も、彼らの作業をさらに困難にしている。

こうした状況下で、石川さんを含む猟師たちの活動は、単なる「処分」以上のものを求めている。ジビエとしての有効活用はその一つであり、台湾ではキョンの肉が高級食材として扱われている。しかし、その需要が一般的な食文化として広まるにはまだ時間がかかるようだ。

石川さんの物語は、地域の獣害を減らす取り組みと、その背後にある使命感を物語っている。彼らの努力が、地域の安全と調和を取り戻す一助となることを願うばかりだ。