1. 日経平均株価の急落とその要因
8月に入って、日経平均株価はわずか3営業日で7600円余り、およそ20%もの急落を見せました。この急落の主な原因は、積み上がった円キャリー取引の巻き戻しに伴う投機的な株買いポジションの解消であり、ファンダメンタルズに直接的な原因はほとんどありませんでした。
2. 円キャリー取引とは何か
円キャリー取引とは、低金利の円を借りて他通貨で運用する取引の総称です。ヘッジファンドなどの大規模な取引だけでなく、個人投資家が円を使って海外の株や投資信託を購入する行為も円キャリー取引に該当します。日本の長期にわたる超金融緩和によって、こうした取引が膨大に積み上がり、それが今回の市場混乱を引き起こしました。
3. 日銀の利上げと市場の反応
7月31日に日銀がやや予想外の利上げを実施したことで、円キャリー取引の巻き戻しが加速し、円高と株価の急落を引き起こしました。過去に日銀が金融政策の正常化に失敗してきた経緯があり、次回の利上げの判断は難しくなりました。
4. 中央銀行と株価の関係
近年、金融政策や財政政策が株価に過剰に影響されているという問題があります。市場の混乱時にすぐに金融緩和を求める声が上がる一方で、株価がバブル的に上昇しても金融引き締めを求める声はあまりありません。これにより、金余りが進行し、金融市場に不均衡が生じるリスクがあります。
5. 株価急落の再発リスク
過去の株価急落時の事例を振り返ると、相場の急落は通常1回で終わらず、2段落としや3段落としがあるのが一般的です。今回の急落が1段目で終わった可能性はあるものの、9~10月にかけて2段目の下落が生じるリスクも無視できません。
6. 日本株と米国株の見通し
日本株はファンダメンタルズが良好であり、調整が済んだ可能性がありますが、やや心配なのは米国株です。米国株はバリュエーションが割高であり、十分な調整が行われたとは言い難い状況です。もし2段目の下落があるとすれば、米国株が主導する形で進行する可能性があります。