警察組織の第一線で数々の重要事件を牽引してきた凄腕の課長が、「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」を理由に処分を受け、退職したというニュースが話題を呼んでいます。
怒鳴り散らすわけではなくとも、不機嫌な態度で周囲を萎縮させる「フキハラ」。圧倒的な仕事の成果を上げ、周囲からも「優秀」と評価されながらも、なぜ彼は警察組織を去ることになったのでしょうか?昭和の熱血指導と令和のコンプライアンスの境界線について考えさせられる、この出来事の背景をまとめました。
華々しい実績!重要事件を牽引した「叩き上げ」刑事
今回退職したのは、警視庁で生活安全部(風俗関係事件など)の課長を務めていた警視正のA氏(60)です。
ノンキャリアの交番勤務からスタートし、途中で昇進が足踏みした時期がありながらも、実力で警視正にまで登り詰めた生粋の「叩き上げ」。その実績は華々しく、近年世間を騒がせた以下の重要事件は、すべて彼が先頭に立って切り盛りしたものでした。
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吉本芸人のオンラインカジノ賭博事件(書類送検)
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全国規模の性風俗スカウトグループ「アクセス」の解体
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直近の「退職代行モームリ」関連事件
外部向けの防犯講話なども精力的にこなし、キャリア組からもその熱意を高く評価されて引き上げられた、まさに「仕事の鬼」とも言える存在でした。
優秀ゆえの落とし穴?尊敬と恐怖が入り混じる職場
しかし、その圧倒的な実力の一方で、職場は彼に対する**「尊敬と恐怖」**が入り混じる異様な空気に包まれていたようです。
記者に対しては誠実で丁寧な対応を見せる一方で、仕事となれば要求水準は異常なほど高く、部下に対しては「俺は優秀だ」「あいつらは使えねえ」と平気で口にしていたと言います。
複数の部下からの聞き取りでは、次のような「フキハラ」の実態が浮かび上がりました。
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男性に反論すると不機嫌になる
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一方的で意見具申できない
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部下の好き嫌いが激しい
明確に「パワハラを受けた」と訴える部下がいなかったのは、彼の指摘自体が的を射ており、「誰よりも仕事をする」という圧倒的な実績があったからかもしれません。しかし、土日の深夜であろうと平気で業務の連絡をしてくるようなスタイルは、若い部下たちにとって確実に精神的な負担となっていました。
昭和の「名物刑事」と令和のコンプライアンス
警視庁は、「良好な職場環境を整える立場にあったにもかかわらず、日常的に不機嫌な態度で接した」として、彼に対して警務部長注意という処分を下しました。(※懲戒ではなく「監督上の措置」)
かつてであれば、毎日通い詰める記者を「根性がある」と認めるような、昔ながらの「オールドプレイヤー」として美化されていたかもしれません。しかし、どれだけ優秀な捜査指揮官であっても、「昔の体育会系」のような威圧的な組織運営が許されない時代になったことを、今回の退職劇は強く物語っています。
退任を前にした飲み会で、A氏は担当記者たちに「自分が率いた課のラベル」を貼った焼酎を振る舞ったそうです。刑事としての強いプライドを感じさせるこのエピソードに、時代の変化に取り残された「名物刑事」の哀愁を感じずにはいられません。
優秀なリーダーであっても、「不機嫌さ」で部下をコントロールするマネジメントは、もはや組織の成長を阻害するリスクとして認識される時代です。皆さんの職場に、「フキハラ」の空気は潜んでいないでしょうか?