ネット通販の拡大とともに、宅配便の数は右肩上がり。 一方で、物流業界の人手不足は深刻化し、政府は「配達員によるオートロックの解錠」制度の導入を検討しています。 早ければ2026年度にも実現する可能性があるこの仕組み──便利さと不安が交錯する声が広がっています。
実際、神奈川県内の配達員に密着した取材では、7軒中4軒が不在。 置き配できたのはわずか1軒。 25kgの荷物を階段で運んでも、結局持ち帰り──そんな現場の苦労が明らかになりました。
この制度では、マンションと宅配業者が連携し、権限を持つ配達員だけがオートロックを解錠できる仕組みを導入。 スマートフォン連動のインターフォンなど、映像と通話で確認できるシステムもすでに2万棟以上で導入されています。
しかし、街の声は賛否両論。 「置き配がないと受け取りが大変」「時間内に来てくれないこともある」など利便性を求める声がある一方、 「誰でも入って来られるのは怖い」「防犯上やめてほしい」といった不安も根強い。 特に、神戸市で起きたオートロック“すり抜け”による殺人事件が記憶に新しく、慎重な議論が求められています。
中野国交相は「自由に解錠できる仕組みではない」と明言。 導入にはマンション管理組合の合意が必須であり、「防犯とセキュリティは大前提」と強調しています。
これは「効率」と「安心」のバランスをどう取るかという社会設計の課題。 都市生活の中で、宅配は“インフラ”になりつつあります。 だからこそ、技術だけでなく、信頼と合意形成が不可欠なのです。