トム・バッソは、特定のトレード手法よりも**「資金管理こそが、トレーディングで成功するための最も重要な要素だ」**と強く主張していました。
彼の資金管理方法は、感情的な判断を排除し、厳格なルールに基づいてリスクをコントロールすることに焦点を当てています。
トム・バッソの資金管理における3つの原則
彼の資金管理方法は、以下の3つの重要な原則に基づいています。
- ポジションサイズを最適化する トム・バッソは、すべてのトレードで**「同じリスク量」**を保つことを重視しました。これは、資金の何パーセントまでリスクを取るかを事前に決めるという考え方です。たとえば、総資産の1%までしかリスクを取らないと決めた場合、ボラティリティ(価格の変動幅)が大きい銘柄ではポジションを小さくし、ボラティリティが低い銘柄ではポジションを大きくすることで、どのトレードでも損失額がほぼ一定になるように調整します。
- ポートフォリオ全体のリスクを分散する 彼は、個別銘柄だけでなく、ポートフォリオ全体のリスクを把握することを非常に重要視していました。たとえば、同じセクターの銘柄や、同じマクロ経済の動きに影響されやすい銘柄を複数持つと、個々のポジションが小さくても、市場全体が下落したときに大きな損失を被るリスクがあります。そのため、彼は相関性の低い銘柄に分散投資し、リスクを多角的に管理していました。
- ストップロス(損切り)を絶対に守る 事前に決めた損切りラインに達したら、いかなる理由があろうとポジションをクローズするのが彼の鉄則でした。感情に流されて「もう少し待とう」と判断することが、トレーディングで大失敗する最大の原因だと考えていたからです。この厳格なルールは、資金管理を心理的な防御策として機能させ、市場で長く生き残るために不可欠だと信じていました。
彼の資金管理の具体的な手法
トム・バッソは、これらの原則を実行するために、具体的な指標を積極的に活用していました。
- ATR(Average True Range)の活用 ATRは、一定期間の株価の平均変動幅を示す指標です。彼はこのATRを使って、ポジションサイズを決定しました。
例:
- 総資産が1,000万円。
- 1トレードで許容する最大損失額(リスク許容額)を、総資産の1%(10万円)と設定。
- 購入する銘柄の1ATRが20円。
- 彼は、ストップロスを2ATR(40円)に設定すると決めていました。
- この場合、1株あたりの損失額は40円です。
- 許容できる最大損失額10万円を40円で割ると、ポジションサイズは2,500株となります。
このように、ボラティリティに応じてポジションサイズを調整することで、どの銘柄をトレードしてもリスク量を一定に保つことができました。
- 「R」値の概念 彼は、1トレードあたりの許容損失額を「R」と定義し、自身のトレードを「R」で計測していました。たとえば、10万円の損失なら「-1R」、20万円の利益なら「+2R」といった具合です。この「R」という共通の尺度を使うことで、トレード結果を客観的に評価し、感情的な影響を最小限に抑えることができました。
まとめ
トム・バッソの資金管理方法は、単なる計算式ではなく、市場で生き残るための哲学です。
彼は、完璧なトレード手法は存在しないと考えていました。どれだけ優れた手法であっても、大負けするトレードを一度でも経験すれば、心理的に立ち直れなくなり、市場から退場してしまうからです。
だからこそ、彼は「大勝ち」を狙うのではなく、「大負けしない」ことを徹底しました。彼の資金管理は、この「大負けしない」ための究極のルールであり、多くのトレーダーに今もなお影響を与え続けています。