群馬県太田市、SUBARU群馬製作所。 そこでは、毎日数百台の車が完成検査を受けていた。 その検査工程の中に、“見えない手”が潜んでいた。 燃費と排出ガスの測定値―― それは、数字の整合性を保つために書き換えられていた。
🧪不正の構造:測定値の改ざん
SUBARUは、完成検査工程において以下の不正を行っていたと公表:
- 燃費・排出ガス測定値の一部を月次報告書で改ざん
- 測定端末や集計システム上での数値の書き換え
- 対象車種:レガシィ、インプレッサ、フォレスター、レヴォーグ、WRX、BRZなど9車種
具体的には:
- 測定対象:3,781台
- 改ざんされた台数:511台
- 良い数値に書き換え:407台
- 悪い数値に書き換え:104台
- 書き換え方法:Excelファイル上で459台、集計システム上で64台
📉なぜ改ざんされたのか?
調査によると、現場の担当者はこう語っている:
「諸元値を下回ってはいけないという空気があった」 「測定値にバラつきが出ると、説明に時間がかかる。だから“整えた”」
つまり、技術的な誤差や運転ミスを“隠す”ために、数値が操作されていた。 ときには、測定条件そのものが誤っていたにもかかわらず、 無効なデータを“有効”に見せかけるために書き換えが行われた。
🏢組織の対応と再発防止策
SUBARUは以下の対策を発表:
- 測定データの改ざんが不可能なシステムの導入
- 測定業務従事者への教育・研修
- 品質方針の抜本的見直し(1994年策定の方針を刷新)
- コンプライアンス意識の醸成と監査機能の強化
吉永泰之社長はこう語った:
「われわれが直さなければいけない根本的な課題は何か。 それを総点検して、このやり方でいいのかと考える活動を進めていきたい」
✒️あとがき:技術と倫理の境界線
SUBARUが売っていたのは、走りの性能だけではない。 それは、“信頼できる技術”というブランドだった。 だが、測定値の改ざんは、その信頼を静かに侵食した。 バラつきを恐れ、説明を避け、数字を整える―― その行為は、技術者の誇りと倫理の境界線を曖昧にした。