2023年3月。 豊田自動織機は、国土交通省・環境省・経済産業省に報告した。 「フォークリフト用エンジンの排出ガス認証に関して、法規違反の可能性がある」――。 その一文は、産業機械の安全と環境性能を支える制度の根幹を揺るがす告白だった。
🧪不正の構造:劣化耐久試験の“逸脱”
排出ガス認証では、エンジンの経年劣化に伴う排出性能を確認する“劣化耐久試験”が義務付けられている。 しかし、豊田自動織機は以下のような不正を行っていた:
- 試験中に排ガス浄化装置を新品に交換
- 規定時間未満で試験を終了
- 測定値の選別や改ざんによって、基準値を満たしているように見せかけた
対象エンジンは:
- ディーゼル:1ZS型、1KD型
- ガソリン:4Y型
- 合計3機種、累計販売台数は約16万台以上
📉出荷停止と制度への影響
- 2023年3月:対象エンジン搭載フォークリフトの国内出荷停止(月産1,400台規模)
- 2024年1月:国土交通省が型式指定取消を含む厳正な対応を表明
- 影響はフォークリフトだけでなく、建設機械や自動車用エンジンにも波及
この不正は、2003年頃から継続していた可能性があり、 「制度の形骸化」と「技術者倫理の崩壊」が問われる事態となった。
🏢組織的背景と再発防止策
- 外部弁護士による調査の後、特別調査委員会を設置
- 委員長は元検事長、委員にはヤマハ発動機顧問などが参加
- 役員報酬の返上(会長・社長は6ヶ月間100%辞退)
- 再発防止策として:
- 試験手順の自動記録化
- 認証業務の分離と監査強化
- 技術者教育と倫理研修の徹底
✒️あとがき:排気の向こうにある信頼
豊田自動織機が売っていたのは、エンジンではない。 それは、“動力の信頼”だった。 だが、試験手順の逸脱、数値の改ざん、そして長年の沈黙。 そのすべてが、産業機械の安全と環境性能への信頼を静かに侵食した。