2013年夏。 「肌がまだらに白くなった」――そんな声が、全国の消費者から次々と寄せられた。 原因は、カネボウ化粧品が誇る美白成分「ロドデノール」。 美白を求めた人々が、思いもよらぬ“白斑症状”に苦しむことになる。
🧪ロドデノールとは何か
ロドデノール(4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール)は、メラニン生成を抑制する美白成分として、カネボウが独自に開発した医薬部外品有効成分。 厚生労働省の承認を受け、2008年から複数の美白製品に配合されていた。
しかし、皮膚の特定部位で濃度が高まると、メラノサイト(色素細胞)を破壊する可能性があることが後に判明する。
📉発覚と対応の遅れ
- 2013年5月:岡山の医師が白斑症例を報告
- 2013年6月:社内調査で29件の白斑症状を確認
- 2013年7月4日:自主回収を発表。対象は38品目・54製品
- 2013年7月末:白斑症状の報告は8,631人に達する
- 2025年5月時点:白斑確認者は19,611人、和解者は19,202人
被害者の多くは、顔や首など目立つ部位に白斑が現れ、日常生活に深刻な影響を受けた。
🧭製品瑕疵と企業責任
この事件は、単なる副作用ではなく、製品設計・安全性評価・情報開示の不備が重なった「製品瑕疵」として社会問題化した。
問題点
- 有効性試験の症例数が少なく、安全性検証が不十分だった
- 初期症例の把握から公表までに時間がかかり、対応が遅れた
- 医薬部外品には公的な救済制度がなく、企業が全責任を負う構造
🧑⚕️その後の対応
カネボウは被害者への訪問・治療費負担・カバーメイク支援などを実施。 また、再発防止のために安全基準の見直しと社内体制の刷新を行った。
厚生労働省も特別研究班を設置し、ロドデノールと白斑の因果関係を科学的に検証したが、医学的な結論は依然として難しいとされている。
✒️あとがき:美白の光と影
「美しくなりたい」という願いが、思わぬ苦しみを生むことがある。 この事件は、化粧品の安全性、企業の誠実性、そして消費者保護のあり方に深い問いを投げかけた。
製品の“効き目”だけでなく、“影響”を見つめる目を、私たちは持たなければならない。