2019年秋。 関西電力の幹部らが、福井県高浜町の元助役・森山栄治氏から巨額の金品を受け取っていたことが発覚した。 その総額、約3億6,000万円相当。 現金、商品券、金貨、スーツ、さらには金の茶器まで――。 “電力の安定供給”の裏で、地元との不透明な関係が長年続いていた。
🧾不正の構造:金品と工事発注の見返り
森山氏は、原発関連工事に関する情報を事前に入手し、 関西電力幹部に金品を渡すことで、自身の関係企業に工事を発注させていた。
- 受領者:関電グループの役職員75名
- 金品の内容:現金、商品券、金貨、スーツ、茶器など
- 便宜供与:工事発注額の事前提示、特命発注、競争入札の形骸化
この構造は、“見返り型の癒着”であり、 森山氏は「関電の弱みを握る人物」として社内で認識されていた。
📉企業ガバナンスの崩壊
第三者委員会の報告書は、以下の問題を指摘した:
- 経営陣が問題を先送りし、組織的に対峙しなかった
- 社内調査は不十分で、取締役会への報告もなし
- 金品受領者を取締役に選任する議案を株主に提出
- 受領金品の修正申告に対し、会社が納税補填を決定
つまり、企業倫理よりも“地元との関係維持”が優先された。
🏛️法的評価と刑事告発の壁
- 金品の趣旨が曖昧で、収賄罪の立証は困難
- 工事発注による会社損失が明確でないため、背任罪も成立しにくい
- 結果として、刑事告発には至らず
この事件は、「違法性がない=問題ない」という狭義のコンプライアンス認識の危険性を浮き彫りにした。
✒️あとがき:電力の裏に潜む“見えない配線”
関西電力が供給していたのは、電気だけではない。 それは、“安心と信頼”という社会インフラだった。 だが、金品の受領、工事の便宜、そして沈黙の連鎖。 そのすべてが、企業の倫理回路をショートさせた。