2017年3月27日。 東京地裁に破産申請が提出されたその日、全国の空港では混乱が広がっていた。 「航空券が発券できない」――。 格安海外旅行で知られていた「てるみくらぶ」が、突如として姿を消した。 その裏には、赤字隠しの粉飾決算と、破産を知りながら代金を集め続けた詐欺的行為があった。
✈️格安旅行の裏側
てるみくらぶは、ネット販売を中心に急成長した旅行会社。 他社よりも数万円〜十万円安いツアーを打ち出し、シニア層にも人気を広げていた。 だがその安さは、赤字覚悟の販売によって成り立っていた。
- 航空会社からの販促金が減少
- 円安による仕入れコスト増
- LCC台頭で価格競争が激化
経営は悪化し、自転車操業に陥っていた。
📉粉飾決算の手口
破産管財人の調査によれば、てるみくらぶは以下のような粉飾を行っていた:
- 2011〜2012年:売上を計上しない「逆粉飾」で赤字を隠す
- 2013年以降:費用の取り消しや架空利益の計上で黒字に見せかける
- 2016年9月期:修正前は資産超過4.6億円 → 修正後は債務超過143億円
金融機関からの融資継続や旅行業免許の維持のため、虚偽の決算書や審査資料を提出していた。
💸詐欺的行為と破産の瞬間
破産直前まで、てるみくらぶは旅行代金を集め続けていた。 中には、破産申請の数日前に振り込んだ顧客もいた。 被害者の中には、人生の節目の記念旅行を楽しみにしていた人も多く、怒りと悲しみが広がった。
- 負債総額:151億円(関連会社含め214億円)
- 被害者数:8〜9万人
- 弁済率:わずか3.5%
⚖️社長の責任とその後
山田千賀子社長は、破産後に複数回逮捕されることになる。 破産法違反や詐欺容疑に加え、自宅に現金1,000万円を隠し持っていたことも発覚。 債権者集会では「嘘に嘘を重ねた」と涙ながらに謝罪したが、 「詐欺ではない」との主張に、会場からは怒号が飛び交った。
✒️あとがき:旅の代金に込められたもの
てるみくらぶ事件は、単なる経営破綻ではない。 それは、信頼を裏切った企業の末路であり、 「安さ」の裏に潜むリスクを私たちに突きつけた。
旅行代金には、期待、祝福、再会、そして人生の記憶が詰まっている。 そのすべてを踏みにじったこの事件を、私たちは風化させてはならない。