2023年4月28日。 ダイハツ工業は、内部通報を受けて衝突試験における不正を公表した。 その瞬間、「安全性の証明」が「安全性の偽装」に変わった。
🚗不正の手口:側面衝突試験の“加工”
- 対象車種:海外向け4車種(プロドゥア・アジア、アギア、ヤリスATIVなど)
- 試験車両の前席ドア内張り部品に不正な加工を施し、衝突時の変形を抑制
- 法規に定められた試験手順に違反し、認証を取得
さらに、国内向け車種(ロッキー、ライズ)でも同様の不正が発覚。 対象台数は累計約16万台以上にのぼる。
🧨制度崩壊の連鎖
- 2023年12月:第三者委員会が174件の不正を確認。対象は64車種
- 2024年1月:国土交通省が型式指定取消(グランマックス、タウンエース、ボンゴ)を正式決定
- ダイハツは全車種の出荷停止を実施。OEM先のトヨタ・マツダ・スバルにも波及
衝突試験だけでなく、排ガス・燃費試験でも不正が確認され、 「安全・環境・信頼」の三本柱が同時に崩れた。
🧭背景と構造的問題
- 最古の不正は1989年「アプローズ」まで遡る
- トヨタ完全子会社化(2016年)以降、短期開発プレッシャーが増加
- 内部通報制度は存在していたが、信頼されていなかった
- 通報後の調査が不正発生部署に依頼される構造
- 匿名通報への対応が不十分
第三者委員会は、「自浄作用が期待されていなかった」こと自体が問題と指摘した。
🔧再発防止と再生への道
- 第三者委員会による真因分析と報告書の公表
- 内部通報制度の見直しと「調査の独立性」の確保
- 2024年4月:「軽自動車中心のモビリティカンパニー」への再構築方針を発表
✒️あとがき:衝突したのは“信頼”だった
衝突試験とは、車が人を守れるかを問う試練。 だが、今回の不正で衝突したのは、制度と倫理、そして企業の信頼だった。
「安全性を証明するはずの試験が、偽装の舞台になっていた」 その事実は、技術者の誇りと制度の意義を深く問い直す。