2016年4月20日、三菱自動車は国土交通省に報告した。 「燃費試験において、法令に定められた方法とは異なる測定を行っていました」――。 その一文は、消費者だけでなく、業界全体を震撼させた。 だが、問題はそれだけでは終わらなかった。 不正発覚後の“再測定”においても、三菱は再び燃費を偽っていたのだ。
🧪燃費試験の仕組みと“走行抵抗”
燃費試験では、車両の「走行抵抗値」を測定し、それをもとに燃費を算出する。 本来は「惰行法」と呼ばれる実測方式で行う必要があるが、三菱はこれを無視。 代わりに、机上計算や恣意的な補正によって、燃費を良く見せる数値を提出していた。
この不正は、1991年から25年にわたり、ほぼすべての車種で行われていた。
📉不正発覚と“再測定”の欺瞞
2016年、eKワゴンやeKスペースなど軽自動車の燃費不正が発覚。 三菱は再測定を実施すると発表した。 だが、その再測定でも、測定方法の趣旨に反する操作が行われていた。
つまり、 「不正を認めた後の再測定でも、また不正をした」 という、前代未聞の事態だった。
🏢組織の構造と“言えない空気”
第三者調査委員会の報告によれば、
- 技術部門は「できない」と言えない雰囲気だった
- 燃費目標が技術的議論なしに設定されていた
- 経営陣は開発現場に無関心で、チェック機能が働いていなかった
不正は、個人の判断ではなく、組織の空気が命じたものだった。
⚖️国交省の対応と制度改革
- 型式指定審査の見直し
- タスクフォース設置による再発防止策の検討
- 自動車型式指定規則の改正
国は、制度の穴を塞ぐために動いた。 だが、制度が整っても、企業の倫理が整っていなければ意味がない。
✒️あとがき:二度目の裏切りが残したもの
三菱自動車は、燃費不正を認めた。 そして、再測定でも不正をした。 それは、消費者の信頼を二度裏切ったということだ。
燃費という数字の裏には、 「環境への配慮」「家計への影響」「企業への信頼」―― 多くの価値が詰まっている。
その数字を偽ることは、ただの“誤差”ではない。 それは、社会との約束を破ることなのだ。