「疑惑を追及する者が、最も深い闇を抱えていた──」
1966年、自民党の重鎮・田中彰治が逮捕された。 その罪状は、恐喝・詐欺・偽証・脱税など、実に7件。 “政界の爆弾男”と呼ばれた男が、自ら爆発した瞬間だった。
🧨第1章:爆弾男・田中彰治とは何者か?
- 新潟県出身、元炭鉱主から政界入り
- 衆議院議員7期、決算委員長を2度務める
- 疑惑追及の急先鋒として名を馳せるが、その裏で“マッチポンプ”と呼ばれる手法を駆使
📌用語解説:「マッチポンプ」=自ら火をつけて自ら消す。疑惑を追及するふりをして、裏で利益を得る構造
🏗️第2章:吹原産業事件からの連鎖
1965年の吹原産業事件の捜査過程で、田中の関与が浮上。 国有地の払い下げをめぐる不正、関係者への恐喝、証言の強要などが明るみに。
- 1966年8月5日:田中と親族・配下らが逮捕
- 8月8日:自民党離党
- 9月10日:衆議院議長に辞表提出
- 9月13日:議員辞職が許可される
⚖️第3章:起訴と裁判──政界の闇が露わに
田中は7件の容疑で起訴される。
容疑 | 内容 |
---|---|
恐喝 | 国有地払い下げをめぐり1億円を脅し取る |
詐欺 | 土地取引で差額を不正取得 |
偽証 | 国会答弁で虚偽発言 |
脱税 | 所得隠しによる税逃れ |
1974年、東京地裁で懲役4年の実刑判決。 控訴中の1975年、肝硬変で死去。公訴棄却により裁判は終了。
🧠第4章:田中の“マッチポンプ”手法とは?
- 決算委員会で疑惑を追及する姿勢を見せる
- 実際は当事者を脅して金品を得る
- 自衛隊のFX問題、九頭竜ダム工事などでも同様の手法が疑われる
🧩第5章:政界の崩壊と“黒い霧解散”
田中事件を皮切りに、次々と汚職事件が噴出:
- 共和製糖不正融資問題
- バナナ輸入利権事件
- 自民党内の派閥資金疑惑
佐藤栄作首相は「黒い霧解散」を断行。 政界の浄化を掲げるも、根深い構造は残った。
🧭まとめ:田中彰治事件が残したもの
- 疑惑追及者が加害者だったという逆転構造
- 政界の“マッチポンプ”体質の象徴
- “黒い霧”は一掃されたのか、それとも形を変えて残ったのか
✍️次回予告|シリーズ第3弾:「黒い霧事件」全体像と昭和政治の病理
次回は、黒い霧事件の全体像を俯瞰し、昭和政治が抱えた構造的問題に迫ります。 フィクサー、派閥、資金、そして沈黙する官僚──その全てが“霧”の中にあった。