🕰️プロローグ:金丸邸の“押収資料”
1993年春。 東京地検特捜部が金丸信元副総裁の脱税事件で自宅を捜索した。 押収された帳簿には、見慣れぬ企業名と金額が並んでいた。 「鹿島建設」「清水建設」「大林組」―― そして、地方自治体の首長たちの名前。
検事はつぶやいた。 「これは、ただの脱税じゃない。政官業の癒着だ」
🧱第1章:コンクリートと票の交換
ゼネコン――巨大建設会社たちは、公共事業を通じて政治家と結びついていた。 道路、庁舎、温室、大学、駅前再開発。 その裏で、見返りとして“賄賂”が動いていた。
- 茨城県庁舎移転工事
- 宮城県開発事業
- 仙台駅前再開発
- 梅田川雨水幹線工事
地方自治体の首長たちは、ゼネコンからの“協力”を受けていた。 その見返りに、発注先が決まる。
🧑💼第2章:逮捕された首長たち
名前 | 役職 | 罪状 |
---|---|---|
中村喜四郎 | 建設大臣 | 収賄罪(有罪確定) |
竹内藤男 | 茨城県知事 | 収賄罪(公判中に死亡) |
本間俊太郎 | 宮城県知事 | 収賄罪(有罪確定) |
石井亨 | 仙台市長 | 収賄罪(有罪確定) |
大山真弘 | 三和町長 | 収賄罪(有罪確定) |
彼らは、ゼネコンからの資金提供を受けていた。 選挙資金、パーティー券、現金――形式は様々だったが、目的はひとつ。 「公共事業の受注」だった。
🏢第3章:贈賄企業の顔ぶれ
企業名 | 幹部名 | 備考 |
---|---|---|
清水建設 | 吉野照蔵・上野晃司 | 建設業団体のトップも兼任 |
鹿島建設 | 清山信二・谷本守 | 東北支店も関与 |
大林組 | 萩原惟昭 | 副社長が逮捕 |
大成建設 | 橋本喬 | 副社長が逮捕 |
ハザマ | 本田茂・加賀美彰 | 支店長まで関与 |
西松建設 | 吉川泰代 | 副社長が逮捕 |
三井建設 | 成島昭 | 副社長が逮捕 |
飛島建設 | 植良祐政 | 名誉会長が逮捕 |
ゼネコン業界の“顔役”たちが次々と逮捕された。 談合、贈賄、政治献金―― 業界全体が“沈黙の共犯者”だった。
🧨第4章:捜査の傷跡
1993年10月、宮城県で事情聴取中の検事が参考人に暴行を加える事件が発生。 検事は特別公務員暴行凌虐致傷罪で立件され、懲役2年・執行猶予4年の判決。 「正義のための暴力」は許されなかった。 だが、それほどまでに捜査は苛烈だった。
🧠エピローグ:コンクリートに埋もれた倫理
この事件は、公共事業という“見える成果”の裏に潜む“見えない腐敗”を暴いた。 道路はできた。庁舎は建った。駅はきれいになった。 だが、その基礎には、政治と企業の癒着が埋まっていた。
- なぜゼネコンは政治家に金を渡したのか?
- なぜ地方自治体は“見返り”を求めたのか?
- なぜ業界全体が沈黙したのか?
今も、公共事業の裏側には、同じ構造が潜んでいるかもしれない。