AI議事録サービス「AI GIJIROKU」で注目を集め、未来の市場をつくる企業として期待されていたオルツ。 しかし、2025年に発覚した約119億円の架空売上を含む不正会計により、上場廃止・民事再生申請という衝撃の結末を迎えました。 今回は、その一連の流れと不正の構造を時系列で詳しく振り返ります。
📅 オルツ不正会計 時系列まとめ
時期 | 出来事 |
---|---|
2014年11月 | 株式会社オルツ設立。P.A.I.(パーソナル人工知能)を掲げる。 |
2020年12月期〜2024年12月期 | AI GIJIROKUのライセンス販売において、循環取引による売上水増しが始まる。 |
2021年6月〜2025年3月 | 「SPスキーム」と呼ばれる不正取引が本格化。広告代理店や研究開発業者を経由して資金を循環。 |
2024年10月 | 東証グロース市場に上場。 |
2025年4月25日 | 証券取引等監視委員会の調査を受け、第三者委員会を設置。四半期決算の開示延期。 |
2025年7月25日 | 第三者委員会が調査報告書を公表。不正の中心に「SPスキーム」があったことが判明。 |
2025年7月30日 | 東京地裁に民事再生法の適用を申請。負債総額は約24億円。 |
2025年8月31日予定 | 東証グロース市場から上場廃止。 |
🔍 不正の構造:「SPスキーム」とは?
オルツの不正は、実態のない売上を計上する循環取引によって行われました。
スキームの流れ
- オルツが広告代理店や研究開発業者に資金を支出(広告宣伝費・研究開発費として)
- その資金が「スーパーパートナー(SP)」と呼ばれる販売代理店に流れる
- SPがオルツからAI GIJIROKUのライセンスを購入したように見せかけ、売上を計上
- 実際にはエンドユーザーにアカウントは発行されておらず、利用実態なし
この流れは、Googleスプレッドシート「SP_事務フロー」で管理されていました。 監査法人の指摘を避けるため、取引先を増やしたり、時期をずらしたりするなど、スキームは進化していきました。
📊 架空計上の規模
年度 | 売上高 | 架空売上 | 架空比率 |
---|---|---|---|
2021年 | 9.6億円 | 7.4億円 | 78.2% |
2022年 | 26.6億円 | 24.3億円 | 91.3% |
2023年 | 41.1億円 | 37.4億円 | 91.0% |
2024年 | 60.6億円 | 49.8億円 | 82.3% |
累計 | — | 約119億円 | — |
広告宣伝費の最大98.1%、研究開発費の最大77.2%も架空計上されていたことが判明しています。
⚠️ なぜ発覚しなかったのか?
- 内部統制の形骸化:社内監査部門が急拡大した取引を把握できず
- 監査法人・証券会社への虚偽説明:販売フローやアカウント数を偽って報告
- AI事業への過度な期待:外部の信頼が高く、疑念が持たれにくかった
- 経営陣の関与:CEO、CFO、財務部長などがスキームの形成と実行に深く関与
🧠 まとめ:AI企業に求められる「誠実性」
オルツの事件は、技術力や成長性だけでは企業の信頼は築けないことを示しています。 「最先端の事業」への期待が、不正を見逃す空気を生み出すこともある。 だからこそ、誠実な経営と透明な会計が、スタートアップの未来を守る鍵になるのです。