8日の東京株式市場は、前日の大幅下落から一転、日経平均株価が+1876円高の3万3012円と劇的な急反騰を見せました。下げ幅は歴代3位、上げ幅は歴代4位
7日の暴落時に、テクニカル指標が底入れを示唆していたことや、信用買い残の投げが出尽くし、戻り売り圧力が低下していたことが、今日の大きな反発の要因として考えられます。ある意味セオリー通りの動きと言えますが、前日の下げの流れの中で積極的に買い向かうには相当な勇気が必要だったでしょう。
しかし、この急反騰をもって完全に暗雲が晴れたと見るのは早計です。中期的には、再び下値を試す展開も視野に入れておく必要があります。
世界経済の懸念:貿易戦争とスタグフレーションのリスク
トランプ米大統領の関税引き上げ政策が、単なる交渉の材料ではなく、本気の財源確保策であるとの見方が強まっています。これにより、世界的な貿易戦争が回避困難になるという認識が広がりつつあり、市場の重荷となっています。
これまで意識されていた米国リセッションへの警戒感は、貿易戦争が激化することでスタグフレーションへの懸念へと増幅する可能性があります。
また、米中間の貿易摩擦は激化の一途を辿っています。中国が米国と同率の追加関税を発表したのに対し、トランプ大統領は中国が撤回しない限り50%の追加関税を課すと警告。中国もレアアースの輸出規制で対抗姿勢を示しており、両国の対立は深刻です。米国は対中半導体輸出規制など、他国を巻き込んだ締め付け強化も示唆しており、予断を許さない状況です。
アジア市場の動揺:楽観視できない現状
8日の東京市場は大幅な反発を見せましたが、アジア市場全体を見ると楽観視できない状況です。半導体関連企業の集積地である台湾の加権指数が大幅に続落し、一時5.5%安まで売り込まれました。特に、TSMCが約11ヶ月ぶりの安値を記録しており、この状況下では、東京市場の半導体製造装置関連株(アドバンテスト、ディスコなど)がトレンド転換し、本格的な反騰に向かうとは考えにくいでしょう。基本的には、戻り売りで対応するのが賢明かもしれません。
その他、インドネシアやベトナム市場も急落しており、米国との貿易戦争による中国経済への悪影響が波及するとの懸念が売りを加速させています。これは日本にとっても決して他人事ではありません。
日本にとっての光明:米財務長官の担当指名
一方で、日本にとっての明るいニュースもあります。ベッセント米財務長官が、日本との貿易協議の担当に指名されたことです。強硬派とされるラトニック商務長官ではなく、対日理解のあるベッセント氏が担当することで、比較的良好な形で交渉が進む可能性が期待されています。財務長官の登場は、為替政策、特に円安誘導への牽制も協議に含まれる可能性を示唆しますが、現時点での過度な警戒は不要でしょう。
明日の注目スケジュール
明日の株式市場に向けては、以下のスケジュールに注目が集まります。
- 国内:
- 午前:6ヶ月物国庫短期証券入札
- 午後:3月 消費動向調査
- 午後:3月 工作機械受注額(速報値)
- 午後:日銀 植田和男総裁 信託大会挨拶(※就任2周年)
- 海外:
- インド準備銀行 金融政策決定会合結果発表
- ニュージーランド中銀 政策金利発表
- 米国:FOMC議事要旨(3月18-19日開催分)、10年物国債入札
明日は、特に米国のFOMC議事要旨の内容が、今後の金融政策の方向性を探る上で重要な手がかりとなるでしょう。
今日の急反騰に安堵する気持ちはありますが、世界経済の不透明感やアジア市場の動揺を考慮すると、引き続き慎重な姿勢が求められます。明日の市場の動きを注視し、冷静な判断を心がけましょ