アメリカによる関税措置を巡り、石破茂総理大臣は7日夜、ドナルド・トランプ大統領と電話で会談しました。約25分間にわたる会談で石破首相は、日本が5年連続で世界最大の対米投資国である現状を踏まえ、アメリカの関税措置が日本企業の投資意欲を減退させることへの強い懸念を表明。一方的な関税ではなく、投資拡大を含む双方の利益となる協力関係を追求すべきだと訴え、措置の見直しを強く求めました。
両首脳は、今後の協議を率直かつ建設的に進めるため、今回の電話会談の内容を踏まえ、双方で担当閣僚を指名し、協議を継続することで合意しました。
石破首相、粘り強く見直しを求める姿勢
電話会談後、石破首相は記者団に対し、トランプ大統領から国際経済におけるアメリカの現状について率直な認識が示されたことを明らかにしました。その上で、「わが国としては協議を通じてアメリカに対し措置の見直しを強く求めていく」と改めて強調。「不安を抱えている国民や日本企業のために、政府一丸となってあらゆる手段を尽くしていく」と力強く語りました。
また、アメリカ訪問の時期については、担当閣僚間の協議の進捗を見ながら、最も適切な時期にトランプ大統領と直接会談することを検討していると述べました。担当閣僚の人選については、双方で今後進めていくとしています。
政府・与党内の評価と今後の動き
政府・与党内からは、首脳間で早期に接触し、閣僚間の協議に道筋をつけることができた点を評価する声がある一方、「日本が巨額の投資を行っているという従来の説明の域を出ず、解決の糸口は見いだせていない」との冷静な見方も出ています。
石破首相は今後、協議にあたる閣僚の人選を進めるとともに、外務省や経済産業省の幹部をアメリカに派遣するなど、あらゆるレベルで粘り強く措置の見直しを求めていく方針です。
さらに政府は8日、全閣僚が参加する総合対策本部の初会合を開き、各分野でアメリカ側との交渉材料を洗い出すとともに、国内の企業への支援策など、万全な対策を講じる方針です。
トランプ大統領のSNS発信
一方、トランプ大統領は電話会談後、自身のSNSで「世界中の国々がわれわれと話をしようとしている。厳しいが、公正な基準を設定している。けさ、日本の総理大臣と話をした。交渉のためにトップチームを派遣するという。彼らは貿易においてアメリカを大変ひどく扱ってきた。彼らはアメリカの車を買わないのに、私たちは数百万台の日本の車を買う。農業についても、多くのほかの『もの』についてもそうだ。すべて変えなくてはいけない。だが、特に中国に対してだ!」と主張しました。
また、「アメリカには何十年も前からすべきだったことを行うチャンスがある。弱気になってはいけない。愚かになってはいけない。パニックに陥ってはいけない。強く、勇敢で忍耐強くなければならない」と述べています。
ベッセント財務長官が交渉担当に
石破首相との電話会談を受け、アメリカのベッセント財務長官はSNSで、トランプ大統領から自身と通商代表部に対し、日本の石破首相、そしてその閣僚との交渉を開始するよう指示があったことを明らかにしました。
ベッセント財務長官は、日本を「最も緊密な同盟国のひとつ」と位置づけ、関税や非関税障壁、通貨問題、政府補助金に関する生産的な議論を楽しみにしていると述べ、日本政府の働きかけと慎重なアプローチに感謝の意を示しました。
一方で、中国がアメリカからの輸入品全てに34%の追加関税を課すと発表したことに対し、「中国は報復措置をとり、これまでの否定的な行いをさらに倍増させて孤立することを選択した」と強く批判しています。
日本側も訪米、閣僚級協議に向け準備
石破首相とトランプ大統領の電話会談を受け、外務省の赤堀外務審議官は7日からアメリカを訪問しており、今後の閣僚級協議に向けてトランプ政権の高官と意見交換を行う予定です。経済産業省の松尾経済産業審議官も訪米しており、日本政府はあらゆるレベルでアメリカとの協議を進めていく構えです。
今回の首脳間の電話会談は、膠着状態にあった日米間の関税問題を打開する第一歩となるか、今後の担当閣僚による協議の行方が注目されます。日本政府は、国益を守るため、粘り強くアメリカとの交渉に臨むことになります。