1. 認知症治療の新薬「ドナネマブ」承認へ
8月1日、厚生労働省の専門部会が、アメリカの製薬大手イーライリリー社(LLY)が開発したアルツハイマー病の新薬「ドナネマブ」の製造販売を認めることを了承しました。これは、原因物質に直接働きかけて認知症の進行を抑制する薬として、エーザイとアメリカのバイオジェンが共同開発した「レカネマブ」に続く国内2例目の承認となります。
2. 認知症患者の増加と社会への影響
日本国内では高齢化の進行に伴い、認知症患者が増加しています。2022年時点で約443万人の認知症患者が存在し、2030年には約523万人、2040年には約584万人に達すると予測されています。さらに、認知症予備軍とされる軽度認知障害(MCI)の患者数も増加しており、2022年時点で約559万人に達しています。これにより、高齢者の約3.6人に1人が認知症またはその予備軍という現実が浮かび上がります。
3. 認知症と介護の必要性、ビジネスケアラーの増加
認知症患者には介護が不可欠であり、その多くは家族が担っています。働きながら家族の介護を行う「ビジネスケアラー」が増加しており、社会問題化しています。経済産業省によれば、2030年時点でビジネスケアラーの数は318万人に達し、経済損失は約9.1兆円に及ぶと試算されています。
4. アルツハイマー病の主な原因と症状
国内の認知症患者の約3分の2がアルツハイマー型認知症で、脳内にアミロイドβやリン酸化タウというタンパク質が蓄積されることが原因です。記憶障害をはじめ、失語や失認、失行といった症状が進行していきます。これに加えて、血管性認知症やレビー小体型認知症など、他のタイプの認知症も存在します。
5. 認知症対策に取り組む企業
認知症治療の分野では、エーザイがアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」をバイオジェンと共同開発し、世界初の承認を受けています。また、武田薬品工業はスイスのバイオ企業ACイミューンとの間でアルツハイマー病治療薬候補について契約を締結しています。その他、ネクセラファーマ、サンバイオ、ファンペップ、小野薬品工業なども、認知症治療薬の研究開発に注力しています。
6. 異業種との連携による認知症対策
塩野義製薬は、ピクシーダストテクノロジーズと協力して、認知症予防や認知機能改善を目指した研究を進めています。これに加えて、NTTドコモや三井不動産などの異業種企業との連携も進んでおり、ガンマ波サウンドを活用した認知機能ケアの取り組みが進行中です。
7. 認知症関連技術を開発する企業
認知症関連技術の開発も進んでいます。富士フイルムホールディングスは、AI技術を用いて軽度認知障害患者のアルツハイマー病への進行を高精度で予測する技術を開発しました。また、島津製作所は血液数滴でアルツハイマー型認知症の進行度を判定する装置を販売しています。FRONTEOは塩野義製薬と提携し、認知症・うつ病の診断支援プログラムを開発しています。
このように、国内外の多くの企業が認知症治療や予防に向けた取り組みを強化しており、今後の進展が期待されます。