1. 証券取引等監視委員会の使命 「市場の番人」と呼ばれる証券取引等監視委員会(監視委)は、株式市場を日夜監視し、不公正な取引、例えば相場操縦やインサイダー取引などを調査します。不正が発見されれば、金融庁に対して課徴金の納付命令を勧告し、必要に応じて検察に刑事告発を行う権限を持っています。この機関の役割は、市場の健全化と投資家の保護を目的としており、その活動は常に厳しい監視の目に晒されています。
2. 今回の摘発事例:風説の流布 今回、監視委が摘発に踏み切ったのは、50代の会社役員が自身の株価を上げる目的で虚偽の情報をネット掲示板に投稿したという事案です。この男性は、2021年7月8日に「Yahoo!ファイナンス」の掲示板に医薬品関連会社HMTに関する虚偽の情報「私的には今年1番の大スクープ!!!初期の認知症を見つける凄い国際特許を取得してたことが判明!!!」「国際特許の検索サイトでたまたま見つけた」「多分これからIRがでる可能性大」などと合理的根拠のない情報を投稿した。その結果株価は急騰しました。彼はこれを利用し、約139万円の利益を得ました。この行為が「風説の流布」に該当するとされ、金融庁に対して209万円の課徴金を納付させるよう勧告が行われました。
3. 風説の流布とは? 「風説の流布」とは、有価証券の取引に関連する根拠のない情報(噂)を不特定多数に伝え、市場を操作する行為を指します。これは金融商品取引法において禁止されている不公正な取引形態の一つです。この他に「インサイダー取引」や「相場操縦」も同様に規制されています。風説の流布は、自己の資金を使わずに他人を利用して相場を操作する点で、相場操縦と異なります。
4. 監視委の今後の方針 監視委は今回の事例を契機に、インターネット掲示板での虚偽情報の拡散に対する取り締まりを強化する姿勢を示しています。インターネット上では真偽不明な情報が飛び交い、監視が困難な場面もありますが、株価に意図的な影響を与える行為は見逃されません。2023年度の金融行政方針に基づき、監視委は市場の公正性を脅かす新たな類型の違反行為にも積極的に対応していく方針です。
5. 市場環境とテクノロジーの変化 市場を取り巻く環境はテクノロジーの進化とともに変化し続けています。インターネット掲示板での不正行為は「現代型」と表現されますが、今やさらに高度な技術を駆使した不正行為も増加しています。監視委がこの変化にどれほど対応できるか、その体制や装備が問われています。
証券取引等監視委員会は、これからも市場の番人として不正取引の摘発に努め、市場の公正性を守っていく必要があります。